“軌跡”

のんびりまったり推し活。加藤和樹さんが好き。

青春アドベンチャー「逆光のシチリア」覚え書き

2024/5/27〜6/7まで放送された、「青春アドベンチャー 逆光のシチリア」全10話まとめです。和樹さんの当て書き主演ということでとても期待していたラジオドラマだったのですが、その期待を大きく超える面白さで毎日楽しませてもらいました。
最初は簡単なメモを残すためにとまとめ始めたのですが、あれも残しておきたいこれも残しておきたい…としている間に物凄い量になってしまいました笑 明らかに後半になればなるほど会話の書き取りが増えています。ラジオを聴きながら書き起こしている形になるので、聴き間違いや誤字脱字がある可能性もありますのでご了承ください。途中私の感想が挟まっている箇所もあります。
また、作品内のモノローグは全て書き起こしています。アウレリオのモノローグは『』、ベネデットのモノローグは【】でまとめています。
とても長い覚え書きメモになりましたが、どのような作品だったか知るのに役立てていただけると思います。また、逆光のシチリアが好きな方にも、こんな台詞が好きだった等々内容を思い出すきっかけにしてもらえると思います。アウレリオの加藤和樹さん中心のメモになりますが、良ければご活用ください。
並木陽先生、こんなに素敵な作品をありがとうございました!また機会があればよろしくお願いします!!(感謝)

 

 

 

 

○第一話○
ノローグは5年後(1864年
『あれは5年前。振り返れば遥か遠い昔のように思える』
1859年7月裁判。アウレリオの勝利
ジャルディーニ公爵閣下の裁判(ペトロニラの父)。名誉を救ってくれた、と喜ぶ公爵。夏に別荘に呼ばれる
ペトロニラと2人でオペラを観に行ったアウレリオ
ペトロニラが納得する相手が現れたなら身分は問わない、と公爵
ペトロニラを絵のモデルにするアリス。ナウシカー姫にたとえる
アリス。インゲストル子爵夫人。金髪。イギリス出身
アウレリオ・カーサデイ。ギリシャの彫像。素敵な目をしている。ナウシカー姫とお似合い、とアリス
『ジャルディーニ公爵令嬢ペトロニラ。海を見下ろす緑鮮やかなその庭に、彼女は他の何より艶やかに君臨していた。彼女が自ら相手を選んだなら、その者の身分は問わない。俺は公爵が口にした言葉を、幾度も反芻した』
ジャルディーニ家はブルボン王家と深い縁がある
イタリアをひとつにしようと声を上げている。潮の流れはナポリのブルボン王家に些か不利、とペトロニラ
農地管理人の息子。ベネデット・シピオーニ。ペトロニラの幼馴染
良い目をしている。パレルモ大学を出た有能な弁護士、とアウレリオの説明をする公爵
『ベネデット・シピオーニ。公爵の農地管理人の息子。フィレンツェの流行りの装いなのか、気取ったネクタイの結び方をしていた。俺はその夏の間、彼とも一緒に過ごす羽目になった』
4人で古代の神殿を観にくる
「ペトロニラ、もう少し日陰に。……ようやく二人きりになれた」←この声もやばない?
「ペトロニラ、あの夜の約束を」「なんのこと?」「ご褒美をくださると。私が裁判で公爵家の領地を守り抜いたら」「えぇ、だから差し上げたでしょう。この夏私と過ごす権利」「なるほど…。ペトロニラ、あのベネデットという男は…?」「幼馴染よ。…妬いてるの?」「えぇ、そうです」←ここもすでにやばい
「……ペトロニラ、ご褒美をもう一ついただきたい」←死ぬ。近い死ぬ
「アウレリオ、待って…!そろそろ二人が戻ってくるわ」
『チェスゲームは大詰めに差し掛かっていた。この勝負を制した時、俺の人生の運が拓ける。あの頃、俺はそう信じていた』
エゼキエーレ司祭。アウレリオの育ての親
「そう言っていただけるようつとめてきました。本当に、あの貧民街から私を拾い上げてくださり…」←どえらい過去きた
『見慣れたパレルモの通り。高い建物がひしめき合うその上に、狭い空は眩しいほど青く、光の強さの分だけ一層影は深い。その闇の中に俺は生まれ育った。だがあと一歩、もう少しで日の当たる場所に手が届く。そう思っていた矢先…』
『裏通りの人混み。近頃流行りのイタリア統一運動の活動家達のおさだまりの演説だと、最初は気にも留めなかった。しかし…』
パレルモ市街でベネデットの演説。「シチリアに自由を!」
『ベネデット。確かにあいつだった。だがソラントの別荘で会った時とはまるで違った。太陽の光を真っ向から身に受けて、あたかも神話の英雄が降り立ったかのような……』
君の瞳が熱く燃えているのが見えたよ!
シチリアを他国の支配から解放するのは夢物語
今回はガリバルディが導いてくれる。英雄
「アウレリオ、君も加われ!」「俺が?」
「それに僕は、君の目の中に燃える情熱を見た!シチリアの未来のために、アウレリオ、君が必要だ!」
『握手の手を差し出すベネデットの姿は、俺には眩しすぎた。この手を取れば、別の生き方があるのだろうか。あの闇深い影を出て光の当たる道を行くような、そんな生き方が。気付けば俺は、彼の手をかたく握り返していた』

 

 

○第二話○
「ベネデットが見込んだ男なら間違いない」とフランチ。配管工
隣町で暴動が起こってから警戒が厳しくなっている
「つまり、政府に不満を持つものたちが各々勝手に騒ぎを起こしているわけか。まるで子供の遊びだ」
本気で事を起こすなら期日と合図を決め、各組織が一斉に立ち上がらないと意味がない、とアウレリオ
革命組織同士の協力体制
ルナ伯爵夫人。我々の活動を援助してくれている
「アウレリオ、お前さんの言葉は説得力がある」
印象がいい方がいいと手土産を考えるベネデット。「あぁ、小細工はいらない。何故助けが必要か丁寧に説明すればわかってくれるはずだ」とアウレリオ
「アウレリオ〜!やはりお前さん、中々見所がありそうだ」とフランチに絡まれ「おい暑苦しい」と払い除けるアウレリオ←すき
ルナ伯爵夫人のもとへ
危ない橋ね、と夫人
貧しい人々のため働いてきたのではなく、金持ちや貴族の依頼だけ受けてきた。「幼い頃から苦労の多い育ちだったもので。しかし、このベネデットが気付かせてくれました。今の世で地位や栄光を求めることは、自分を苦しめてきた社会を肯定するのと同じこと。自ら変えるために戦うべきだと」
「ふふふ。正直な方は、好きよ。あなた、真っ直ぐな目をしているのね。少し息子を思い出すわ」
息子は12年前、1848年のシチリア独立革命で命を落とす
紹介状を書いてくれるルナ伯爵夫人
「ふたりとも、これから時々遊びにいらっしゃい。手作りのカンノーリをご馳走するわ」
警官から逃げる二人
エゼキエーレ司祭のところに到着
「すぐそこで友人に会いまして…」「そんなに息を切らして?」「その…かけくらべです!」「かけくらべぇ!?」「こちらの教会までどちらが先に着けるか、競争を!」←かわいい
「そのように共に童心に帰れる友ができたとは、この子は昔から友達を作ろうとせず心配しておったのだが…そうかそうか」と喜ぶ司祭
アウレリオはイワシのパスタが好物。共に夕飯を食べる
幼い頃から利発だったアウレリオ。聖職者を目指して進学校に通っていたが、侮辱に耐えかねて決闘騒ぎを起こし退学に。相手が富豪の息子でどうしようもなかった
そこからパレルモ大学に通い弁護士になった
「アウレリオ、良い友達を持ったな…。こんなに楽しい夜は久しぶりだ!」←めちゃくちゃここの言い方好き
イタリア統一運動に否定的な司祭
「司祭様…」窘めるアウレリオ
「ベネデット、どうか、アウレリオをよろしく頼む」と司祭
「お優しい方だ。君が統一運動に参加していることを知れば、悲しまれるだろうなぁ」「軽蔑したか?」「は?」「俺が貧民街生まれの孤児だと知って」「馬鹿言うな!そこまでになるのは、並大抵の努力じゃない!改めて君を尊敬するよ。今日は本当に助かった。君に借りができたな!」
『司祭様のお心に背いて統一運動に熱を上げるなど、それ以前の俺なら考えもしなかったろう。闇の中、ガス灯のほの白い灯りに浮かび上がる夜のパレルモ。オペラに夜会にと明け暮れる貴族たちの遊興。かつて俺は、そんな世界での栄達を願った。だがその輝きも、不思議と色褪せてみえるようになっていた』
ペトロニラとオペラを見た帰りの馬車の中。名前を呼ばれても気付かない
「失礼、なんでしたか?」←ここの言い方好き
「いえ、厄介な訴訟の件で。でもそれとこれとは話が別でしたね。私の不徳の致すところです」←好き
怒ってるペトロニラ
「少し疲れていただけです。私の目に映るのは、いつもあなただけですよ」
「ペトロニラ…機嫌を直して」←ヒエーーーーーッ
「離して…!思い上がらないで!お父様のお気に入りだからって」「どういう意味です?私のような卑しい雇われ弁護士は、高貴な貴方に相応な扱いをせよと?」
「えぇそうよ!私があなたの出自を知らないとでも!?」「っは…なるほど。貧民街生まれの下賤な男など自分に相応しくないと、貴方はずっと俺を?」(相応しくないと、の言い方良すぎ)
「馬車を停めてくれ!歩いて帰ります。私のようなものとこれ以上一緒にいるのはお嫌でしょう」
「どうぞお好きに!夜道で物取りに刺されても知らないから!」
『あの時は俺も頭に血が昇っていた。あんな高慢なお嬢様に入れ込んでいた自分が馬鹿馬鹿しくなり、ちょうどいい。この機にすっぱり忘れてしまおうと、ひとり決意したのだ』
「元気がないなぁ。ペトロニラと何かあったのか?」「どうして?」ベネデットとの会話
最近ペトロニラはひどく塞ぎ込んで誰とも会わない
「俺の方はただ彼女のご希望に沿ってるだけさ」の「だけさ」の言い方沼
「何を言われた?」「身分を弁えろだと」←すっっっっっっっき
「真に受けたのか!アウレリオ、君も存外鈍いな!」それな
身分の違いは変えられる。今の社会の歪みを正すと息巻くベネデット
『対等の立場。ベネデットはそう言った。だが彼も俺も、本当はわかっていたはずだ。もし本当に社会が変わり、既存の身分制度が崩れ去った時、あの誇り高いペトロニラが、そのままでいられるはずなどないことを…』

 

 

○第三話○
ルナ伯爵夫人のところでカッサータをご馳走になるふたり
「いえ…母親にお菓子を作ってもらうというのはこういう感じかと…」←アウレリオおおぉ…
ふたりが来てくれて嬉しい夫人
決行日は4/4、復活祭の聖なる水曜日。合図はガンチア修道院の朝の鐘
英雄ガリバルディはまだシチリアに現れない
「まずは命があってこそよ。アウレリオ、ベネデット、くれぐれも気をつけて」「「はい」」
『あれはカルネバーレの最終日の前夜だった。広場の中央で炎が赤々と燃え盛っていた。祭りの山車の人形を燃やす火、四旬節が過ぎて復活祭がきたその時、俺は戦いの中で命を落とすかもしれない。ペトロニラにもきっともう二度と会えないのだと、そう思いかけていた』
祭りの喧騒に紛れて他の組織の連中と連絡を取り合う
火の周りで踊っている中にフランチ。そのお相手はアリス
アリス「はぁーい」アウレリオ「えっ??」←かわいい
「驚いた。他人の空似か」「いや、違う!」
「フランチ、変わってくれ」「なんだよ」「俺も金髪の美女と踊りたい。お相手願えますか?」「喜んで、シニョール」←すき
「インゲストル子爵夫人、何をなさってるんです」の言い方すき
「あら!変装したつもりだったのに!」「こちらの民族舞踏が踊れるんですね」お忍びで通い続けて覚えたアリス
ペトロニラがずっと家に篭りきり、日曜の朝だけは出かけると教えてくれるアリス
『ジェズ教会。一歩足を踏み入れれば、細やかで複雑な白い大理石の装飾が、白いレースのように内側を覆い尽くしていた。柱の側の長椅子で、ベールに包まれて祈るペトロニラ。彼女に会ってどうしたいのか、自分でもはっきりわかっていたわけではない。彼女に謝らせ、思い知らせてやりたかったのか、それとも…』
「お嫌なら断ればよかったでしょう?」←好きすぎる
「相変わらず意地悪な人」「ペトロニラ、あなたは平気でしたか?私とずっと会わずにいても」「何を!自惚れも大概に…」
「俺は平気ではなかった。離れている間、あなたのことばかり。このまま二度と会えないと思うだけで気がおかしくなりそうだった。たとえあなたに、卑しい生まれの男と蔑まれていたとしても…」「あれは…!」
「もう一度聞きます。私と離れて、貴方は平気でしたか?」←死んだ。マイクに近付くのやめ…いやいいぞもっとやれ
「あなたが悪いのよ…!顔も見せず連絡も寄越さず、たまに会えば上の空…」「ペトロニラ、あなたの気持ちに気付かないとは。こんなに無粋な男では、やはり貴方に相応しくありませんね」「いいえ…アウレリオ…。いつかはひどいことを言ってごめんなさい。お願い、もう私を離さないで…」
復活祭から旅に出ると伝えるアウレリオ。「戻ったらお父上に正式にお許しをいただきに参ります。ペトロニラ、私と結婚してくれますか」「アウレリオ…!えぇ、貴方なら、構わないと父は言うでしょう」
「旅に出る前にあなたが私を思ってくださるという確かな約束が欲しい」とアウレリオ
今は四旬節。復活祭が終わるまで身を慎まないといけないとペトロニラ
「旅から戻るのは少し先になります。一度情けをいただければ、きっと思い出をよすがに、再会の日まで生きられる」←これ言われたらもう断れないよね
次の新月の夜、部屋の窓を開けておくから、12時の鐘が鳴ったら夜闇に紛れて家の裏手にあるオレンジの木を登ってきて欲しい
「アウレリオ…約束よ。待っているわ…」←約束絶対果たされないな、と確信するオタク
決行目前。ベネデットとの会話
「ベネデット、いつか君は言っていたな。この革命が成功し、社会の歪みを正すことができれば、俺とペトロニラも対等の立場で愛し合えるはずだと。柄にもなく、俺はそんな未来を信じてみたくなった」「アウレリオ…」
ひとりでも多くの賛同者を得るために行動するベネデット。警官に見つかり銃撃される
『その夜の空はやけに眩しかった。月がない分だけ、星の一粒一粒が大きく見えた。あの時、俺は本気で信じていたのだ。ペトロニラとの愛を成就させ、ベネデットと共にこの世界を変える。そのふたつを成し遂げた時こそ、自分は胸を張って太陽の光の下を歩くことができるのだと。約束まで、既に一時間を切っていた…』
瀕死のベネデットがアウレリオのもとへ
憲兵は、なんとか撒いたんだが…」「信用できる医者がいる!すぐ呼んできてやる!」「世話をかける…」
『俺は走った。ベネデットを死なせるわけにはいかない。だが、12時の鐘は間もなく鳴ろうとしていた。頭を過ぎるペトロニラの面影を、俺は幾度も振り払った』
「アウレリオ…」「ベネデット!気がついたか?……痛むか?弾は取り除いてもらった。命に別状はないそうだ」「また君に助けられた…感謝する…」「まだ熱が高いな。少し眠れ、俺はここにいる」「あぁ…」
『ベネデットの手を握り、一睡もせずに夜を過ごした。やがて、窓から夜明けの光が差し込んできた。流石に彼女ももう、俺を待ってはいなかっただろう』
一晩中待ち続けて、冷え切った身体のペトロニラ。駆け寄るアリス
「この私が、生まれて初めて全てを捧げていいと思ったのに…!」「アウレリオ…許さない…。私のただ一つの想いを踏み躙ったこと。きっと後悔するわ」愛情が憎悪へと変わるペトロニラ

 

 

○第四話○
『ジャルディーニ公爵邸の裏手、オレンジの木のそばで、俺は二階の窓を見上げて立ち尽くした。日が暮れて夜になっても、彼女は遂に顔を見せてはくれなかった』
「よかったの?ペトロニラ。あの人とうとう帰っていったわ」「いいのよ。今更何を言われたところで…」「きちんと向き合った方がいいわよ。あんな風に謝りにくるなんて、やっぱり深い訳が…」
明後日の便で国に帰るアリス。ペトロニラの心配をする
アリスは私にとって姉妹と同じ、とペトロニラ
いよいよ決行日前日。決起の酒盛り
「怪我人は寝てろと言っても聞きやしない。動けなくなったら置いてくからな」←絶対ベネデットを置いていかないと確信できるアウレリオ
『もしここで命を落としたら、ペトロニラも少しは俺を憐れに思うだろうか。この後に及んで、ついそんなことを思ってしまう自分がいた。蜂起の合図は、ガンチア修道院の朝十時の鐘。待機場所である、マジオーネ通りの武器倉庫で、俺はその時を待った。いっそ早く鐘が鳴ればいいと思いながら』
十時より早く鐘が鳴り、銃撃が始まる
「ベネデット、俺のそばを離れるな!」←好き
司祭のもとを訪れるペトロニラ。昨夜の話を打ち明ける
昨夜、アウレリオとどうしても話したくて馬車で待ち伏せしていたペトロニラ。蜂起の計画の全てを見てしまう。その後父に全てを話してしまった
「私、帰って父に見たままを話しました。きっと蜂起の計画だと察していながら、何故話してしまったのか…自分でもわからないのです。事が起こる前に検挙されれば、あの人を危険な場所にいかせずに済むと思ったのか…。いいえ、もしかしたら私は、あの人が衛兵の手にかかって死んでしまえばいいと思ったのかも」「落ち着きなさいペトロニラ嬢。御父君に話されたのはそなたの立場では当然のこと」
衛兵がガンチア修道院を取り囲み撃ち合いが始まった
「それでも今、あの人がこの街のどこかで傷つき、倒れているかもと思うと。もしアウレリオが命を落としたなら、彼を殺したのは私です。私が父に話したから…!」自らを責めるペトロニラ
全てを神にお任せし祈るようにと司祭様
銃撃で皆やられる。事前に計画が漏れていたと気付く
爆撃の後、「皆…生きてるか…?」とアウレリオ。生き絶えたフランチの姿
息も絶え絶えなベネデット
「アウ…レリオ…」「ベネデット!」「大丈夫か…血塗れじゃないか…」「そっちこそ…!これで終わりか…?俺たちがしてきたことは、全て無駄だったのか?」「いや、まだ終わりじゃあない。じきに英雄、ガリバルディが…」「ガリバルディだと…」ガリバルディが来ると信じて疑わないベネデット
「待ってろ。俺がガリバルディを呼んできてやる。ジェノバに行って、俺たちシチリア人が自ら立ち上がったことを俺が伝えてやる!」「あぁ…それはいいな…。アウレリオ…ありがとう…」「ベネデット…!目を覚ませ…!」この辺りの怪我をしたアウレリオの吐息が好き過ぎる。やられる芝居がうまい加藤和樹
『英雄ガリバルディ。俺たちがこれだけ血を流しているというのに、一体何をしている。この戦いが実を結ばなければ、皆犬死にか。そんなことには俺がさせない。港に辿り着ければ、ジェノバまで行く船はある。ジェノバへ。その一心で重い体を引き摺りながら、俺は気を失った』
目を覚ますアウレリオ。馬車の中、目の前にはエゼキエーレ司祭様。まもなくパレルモの港に着くところ
「この度の反乱に加わった者は多くがその場で射殺され、生き残った者は銃殺刑だと。アウレリオ、捕まれば、そなたも命はあるまい」「くっ…」「当局には、そなたは死んだと報告した。シチリアを出て、ジェノバへ行け。海の向こうへ逃れるのだ」「ジェノバ…」「そなたがうわ言でそう口にしていたゆえ」「しかし司祭様…。私は、あなた様のご期待に背いて…」「アウレリオ…。手塩にかけたそなたを見捨てる儂と思うか!」「エゼキエーレ司祭様…ご恩は忘れません。貴方様は、血を分けた父以上のお方です」「ひとつ教えておく。そなたがこの戦いに加わっていることを儂に教えてくれたのは、ペトロニラ嬢だ」「ペトロニラが…!」「彼女のお陰で、そなたの命を救えた。こうなっては親しい者にもそなたが生きていることを知らせるわけにはいかぬが、そなたは、いつも彼女のために祈ってやるがよい」
ジャルディーニ公爵家で看病されるベネデット
「どうぞ、お見捨てください」とベネデット
農地管理人の息子であるベネデットが捕まれば我が家にも累が及びかねない。ここにいる限りは私の力でどうとでもできる、と公爵閣下
アウレリオの名前が死亡者リストにあったと報告を受けるペトロニラ。ショックを受ける
「アウレリオ…!私のせいよ。私が貴方を…!本当に貴方はもう、どこにもいないの?私にこんな思いをさせておきながら…ひどい人。アウレリオ、あんまりだわ…!」
船が出航する。アリスと共にいるアウレリオ
ジェノバまで10日ほど。海の上は安全だから傷を癒して、とアリス。「すまない」「いいのよ。成り行きとは言え、「アウレリオのことは任せて」ってあの司祭様に約束しちゃったし」
「貴方も随分お人好しだ。港で行き合った俺を助けてくれるとは」「知らない仲じゃないし、見捨てておけないもの。私がイギリス行きの船に乗る前でよかったわね。でも、ジェノバに行ってどうする気?」「インゲストル子爵夫人…。俺は、ガリバルディに会いたいんだ」「ガリバルディ!面白そう。付き合うわ!」「……本気か?」「私、結構顔が広いの。多分力になれるわ。確かに、シチリア人が自ら立ち上がった今回の事件の生き証人として、貴方ならガリバルディの心を動かせるかもね。それで、彼がシチリア遠征を決意してくれれば、ガリバルディを支援しているイギリス政府も大喜び!」「貴方は…何者だ…?」「やだ、別に何者でもないわ。ただ、ジャルディーニ公爵家に滞在していたら、ナポリブルボン政府側の動きはよく見えたし。ルナ伯爵夫人やフランチに時々情報提供をね」「フランチ…ルナ伯爵夫人とも知り合いなのか?」「ペトロニラを裏切ったつもりはないんだけど、ちょっと悪いことをしたかしら。せめて、貴方とうまくいってほしかったけど。過ぎたことを言っても仕方がないわよね。お喋りはこのくらいにしましょう。傷に障るから」あまりにもアリスが衝撃すぎて気がついたら全部書き出してた…。何者なのアリス…
『あの1860年、4月4日のパレルモ蜂起から約一月後、ガリバルディシチリアに上陸。ナポリブルボンの国王の支配からシチリアを解放した。統一イタリア王国が成立したのは翌年、1861年3月のことだった』

 

 

○第五話○
『あの1860年、4月4日のパレルモ蜂起から程なく、ガリバルディシチリアに上陸。ナポリブルボンの国王の支配からシチリアを解放した。彼と共にシチリア遠征を果たしていれば、俺も今頃は、故郷の英雄となっていただろうか。アリスの力を借りて、ジェノバガリバルディシチリア遠征を嘆願した後、俺は怪我が癒えず長く療養を余儀なくされた。統一イタリア王国は成立したが、その実態は、シチリア南イタリアの支配者が、ナポリ王からサルデーニャ王に代わっただけ。貧しい者は未だ貧しく、社会の歪みを正すには程遠い。今更シチリアに戻る気にもなれず、俺は統一イタリア政府に抵抗する義勇軍に加わって、南イタリアを転戦し、かれこれ5年余りが過ぎた』
水、煙草。村の人たちから政府軍を追っ払った礼
シチリアのことが書かれた新聞。ルナ伯爵夫人の死
パレルモ市議会の声明文が裏に
パレルモ市議会経済顧問、ベネデット・シピオーニ。かつて目を輝かせながら俺に理想を語り、道を示してくれた君が、今やこの腐った新政府の一員だと。貧しい者が虐げられ続けているこの状況を、統一政府への抵抗を続けたルナ伯爵夫人の死を、君はそこからどんな気持ちで…。ベネデット、君は一体どうしてしまったんだ』
流通網の拡充。鉄道路線の開通。ペトロニラの乾杯の挨拶
ベネデットと結婚したペトロニラ
「妻は新政府の方針にも仕事にも理解を示してくれている」とベネデット
ベネデットは5年前の革命で多大な功績をあげた
【古い貴族に代わりこれからはブルジョワが支配する時代だ。没落したジャルディーニ家の人々と、その領地を守るためには、全てを僕のものにするのが最善の選択だった。北イタリアの影響の下、近代化が進めば、このシチリアも次第に豊かになる。この波に乗り、更なる力が欲しい!】
知事に誘われたペトロニラ。「君の才覚を存分に発揮して知事を魅了してきてくれ」新規事業への融資も上々だと喜ぶベネデット
ペトロニラのお腹には、ベネデットの子がいる
『どの新聞も彼ら夫妻のことで持ちきりだ。パレルモ社交界の花形、ベネデット・シピオーニとペトロニラ。貴婦人を妻として階級社会の頂に上り詰める。そんな栄光など虚しいと俺に教えてくれたのは、ベネデット、他ならぬ君だ。帰らなくては、捨て去った故郷、シチリアに』
変わらないアリス。「貴方は最初誰かと思ったわ。その髭、お似合いよ。中々変装がお上手ね。久しぶりのシチリアはどう?アウレリオ」「ジュリオだ。アウレリオは5年前に死んだ」「ジュリオね」
ルナ伯爵夫人が暗殺された件。夫人は新政府に目をつけられて郊外の山荘で暮らしていたのに、何故かパレルモに出てきた。誰かに誘き出されたのか、それとも
伯爵夫人の下で蜂起を計画していた人物に会いたいアウレリオ。伯爵夫人のことも気になるので調べてくれるアリス
「その代わり、彼らのところに行くときは私も一緒に行くわ」「なんだって」「なんだか面白そうだもの。嫌なら協力しなーい」←かわいい
「改めて、よろしくね。ジュリオ」アリス好き
『11月2日、今日は天に召された魂が年に一度地上に戻るという死者の日だ。5年前、あの4月4日の蜂起で散っていった嘗ての仲間たちは、ペレグリーノ山の麓、海を臨むサンタマリアデイロートリ墓地に眠っている』
「上物のワインだ、飲んでくれフランチ。潮の香りがして、悪くない場所だな。なぁ、君はどう思う?今のベネデット。あれだけの地位と力を得ながら、奴はルナ伯爵夫人を救おうとはしたかったのか。……ん?あれは?……アウレリオ・カーサデイ。俺の墓…?」
アウレリオの墓に誰かくる。ペトロニラの姿
『ペトロニラ。死者に贈るクリザンテーモの花を、あの身重の体でここまで。もしや毎年手向けてくれていたのか?俺のことなどとうに忘れただろうと思っていたのに。5年前のあの夜、12時の鐘が鳴る前に手負いのベネデットが俺のもとに駆け込んでこなければ、ペトロニラ…今頃貴方は、俺の妻。お腹の子の父親は俺だったかもしれない』
ベネデットとサルバトーレの会話。裏金を渡す
それを見ていたペトロニラ。「あのような者たちに、まさかこれまでも?」「綺麗事だけでやっていけないことは、この5年で思い知らされた。多少の無理は避けられないさ」「だからといって…」「ペトロニラ!君や子供達、僕のもとで働いてくれる者たちを守るためだ。君ならわかってくれるだろう」「……そうね。あの頃のような惨めな思いは二度とごめんだもの。私と貴方は、同じ船に乗った者同士」「ほら、怖い顔はやめて。お腹の子の為にも、頑張ろう」
『冬の曇天の下、無骨な岩肌を露わにした山々が連なり、中腹には葉の落ちた葡萄の段々畑が広がっている。遠くで羊の群れが僅かな草を奪い合うように蠢く以外、辺りに動くものの気配はない。本当にここに彼らが潜んでいるのだろうか。ルナ伯爵夫人の近くにいた彼らなら、彼女の死の真相を知っているはず…』

 


○第六話○
新たな時代の訪れ
『冬の曇天の下、無骨な岩肌を露わにした山々が連なり、中腹には葉の落ちた葡萄の段々畑が広がっている。遠くで羊の群れが僅かな草を奪い合うように蠢く以外、辺りに動くものの気配はない。本当にここに彼らが潜んでいるのだろうか。ルナ伯爵夫人の近くにいた彼らなら、彼女の死の真相を知っているはず…』
最近アジアを巡ってた、日本の横浜にも寄港したとアリス
「どこまで本当の話なんだ?」「どこまでだっていいでしょ。今私はイギリス人の旅行者。貴方はその護衛兼案内役という設定なんだから」「はいはい」「真面目にやってよ!……ねぇ、気になってるんだけど、そのロバの背中の荷物、何?」「これか?つまらんものさ」「教えてくれてもいいじゃない!あっ…」「大丈夫か?」←かっこいい
目指すはウサギの耳の形をした岩。近付いてきたところで、大勢が二人を囲む
「生意気な目付き、気に入らないね」と大勢を率いていた女性に言われるアウレリオ
ドン・ニニに会いにきたアウレリオ。ルナ伯爵夫人の名前を出す
ロバと積荷は引き渡す。「好きなだけ見るがいい」と積荷を見せる
ロバの背に乗せているのはオルシーニ爆弾80個
「もとよりこの荷物は君たちへの手土産だ。挨拶に手ぶらで来るほど礼儀知らずじゃないんでね。必要とあらば作り方も教えてやれる。もう一度頼もう。ドン・ニニという人に会いたい」ここの詰め寄り方好きすぎる
現れるドン・ニニ。やりとりをしていた女性はマリッキア。「色男さんよ、話はゆっくり聞かせてもらおう」
飲みながら話す二人
ブロンテ村の生き残りのおばあさん。ガリバルディの軍に亭主と息子を殺された
「英雄にも、色々な顔があるってことよ」とアリス
山に潜む彼らは皆訳あり
ルナ伯爵夫人の話になる
「ドン・ニニ。俺は知りたいんだ。誰がどうしてあの人を…貴方達なら何か…」「はっ、わかるわけがねえ」「俺はあの人には恩がある。息子のように可愛がってくれて、手作りの菓子もご馳走になった」「そうか…。俺たちだってルナ伯爵夫人には色んなことを教えてもらったさ。弔い合戦は俺たちなりの方法でさせてもらう」「弔い合戦…」「俺たちの力でこのシチリアをひっくり返してやるのよ!」熱く語るドン・ニニ
「なるほど、面白い。金持ちどもに一泡吹かせようということなら、俺も多少は貴方たちの力になれると思うが」「ほう」「俺は南イタリアで抵抗運動を指揮していた。戦い方は知ってる」「あっちじゃ派手にやってるらしいな。いいだろう。そこまで言うならおまえさんの力がどれほどのもんか見せてもらおうか」
『彼らの信頼を得ない限り、何も話してはくれまい。暫く付き合ってみるのも悪くない。それにこれは、いい機会かもしれない』
ペトロニラとベネデットのシーン
線路事業をしているものの、線路泥棒に鉄材を狙われる。これ以上工期に遅れが出ないよう気をつける、とベネデット
線路の鉄材を盗み、運んでいく。ドン・ニニとアウレリオの会話。駕籠かき人夫や荷馬車引き等、町の人たちに協力してもらう
いつも絵を描いているアリス。鉄材の山
「ねぇ、あのアリスって人はアンタの何?」「古い馴染みだ。あれで中々頼りになる」「ふぅん…」とマリッキア
『金持ちどもに一泡吹かせようとする山賊たちの標的が、あの男であって何故悪い。ベネデット、シチリアの人々の苦しみにも、世話になったルナ伯爵夫人の死にも顔を背け、その座で富を貪っている。やはり奴だけは許せない』
枕木の犬釘を緩めてきた。日雇いの鉱夫に化けるアウレリオとピッポ
そこに現れるベネデット
声を変えて話すアウレリオ。「へえ、旦那様。以前港で荷下ろしを手伝わせていただいた折に、私ども日雇いに仕事をいただき、ありがとうございます」←声だけじゃばれない声質ですごい
『ベネデット…。見るからに仕立ての良さそうな服。すっかり上流の紳士気取りか。下々のことなど一々覚えてもいまい。君は本当に、もう俺の知る君ではなくなってしまったのか…』
【気のせいだ。顔の髭、日に焼けた逞しい体。彼とは全く別人だ。だが、あの強く光る目。深く頭を下げて、上目遣いにこちらを見たあの目は…。馬鹿げてる!彼は、アウレリオは、とっくにこの世を去ったのだから…】

 

 

○第七話○
『ベネデット…君がシチリアの近代化のためと嘯きながら、人々を踏みつけにして栄達の道を選んだなんて、俺はどうしても受け入れられない』
線路を盗み出そうとするも、見回りに出たピッポからの合図。全員撤退するも、ピッポは連れて行かれてしまう
サルバトーレに拷問されるピッポ。そこに現れるベネデット
「一緒にいた男はどういう奴だ?名はなんという?いつからお前たちの仲間に!?」ピッポに詰め寄る
【昼間のあの男が、アウレリオである筈がない。僕は何を恐れている】
アウレリオはピッポを助けに行こうとする。「あたしらは捕まったら最後、死ぬ覚悟はできてる。ピッポだってそうさ!」「我々が危険を逃れたのは、彼の警告のお陰だ。俺一人ででも助け出す!」「おぉ…そこまで言うか」「余所者にだけやらせるわけにいかない。父さん、あたしらも!」(俺一人ででも助け出す、って言うアウレリオがあまりにもかっこよすぎる)
アリスがジャルディーニ家の別荘の場所をアウレリオに伝える。そこが連れて行かれた場所だと当たりをつけて行ってみることに
「ただちに…」「殺すな!」「は?」「生かして捕えるんだ!」「そう言われましても…」「僕に二度言わせるのか?」アウレリオの影を感じる男を殺すことは絶対許さないとばかりに伝えるベネデット
ピッポを見つけて助け出すアウレリオとマリッキア。そこにサルバトーレとベネデット
「待て!」「!」「アウレリオ…君なのか…!」「ジュリオ!」マリッキアに呼ばれて、声を振り切って窓の外へ逃げるアウレリオ
「アウレリオっ…!!」叫ぶベネデット
隠れ家で皆で食事。ドン・ニニとの会話
「おめえさん引き時ってのを心得てやがるな。流石南イタリアで鳴らしただけのことはある」「なんだ、随分褒めてくれるな」「とっ捕まったやつを本当に取り返してくるとはたまげたぜ!近いうち、二人で飲み明かすとしようや」信頼を得たアウレリオ
ベネデットは帰宅。ペトロニラに抱きつく。震えている
「亡霊だ…」「亡霊…?」「ペトロニラ、そばにいてくれ。どこにもいかないでくれ」「えぇ、ここにいるわ。何も怖がることはないのよ」
【あれは本当に、アウレリオだったのか。或いは、僕の心が作り出した幻?かつて僕が語った理想に殉じたあの男の亡霊が、今になって僕を責め立てにきたとでも言うのか…】
絵を描くアリス。マリッキアが問いかける
「いっつもそんなに描いてるけど、何がそんなに面白いわけ?」「何って?見るもの全てよ」「はぁ?」「国にいると息が詰まって仕方ないの。色んな場所にいって、そこにしかないものが見たいの」
マリッキアの過去。行商に出ている間に憲兵に殺された母と弟たち
「ねぇ、アンタとジュリオは…その…」「そういうのじゃないわ。彼にはずっと、忘れられない相手が他にいるし。私にも大事な人がいるもの」「そう」
マリッキアは逞しくてしなやかで、私の好きな人に似ている。その人はシチリアの海辺の景色のように色鮮やかな人。愛情深くて誇り高くて意地っ張りで、私にはない強さと激しさを持っている。その人が幸せならいいの。とアリス。ペトロニラへの深い愛情
ドン・ニニとアウレリオのサシ飲み
ルナ伯爵夫人が誰にやられたかまではわからない。危険を承知で何故パレルモまで出てきたのか
亡くなる少し前に会った際、昔馴染みとこっそり会う約束をしていたと教えてもらう。4月4日の蜂起の頃からの付き合い
誰を思い浮かべている?教えてくれ、と言われベネデットの名を出す
「はっはっは!こないだピッポが世話になった相手じゃねえか。どうやらあちらさんとは深い縁があるようだな」とドン・ニニ
「よせ…その目で僕を見るな……アウレリオっ…!」酷く魘されるベネデット
ベネデットが寝るまで抱きしめてあげるペトロニラ
【あれから毎晩のように、彼が夢に現れる。あの強い眼差しで、黙って僕を見つめてくる。6年前の革命以来、激動の中で上に立つ者は次々に代わり、築いた地位を守るため、手段など選んでいられなかった。アウレリオ…この泥沼のような時代を知らず死んでいった君に、僕を糾弾する資格など…!】
「亡霊とな…」とエゼキエーレ司祭様。「まるで私が誰かに奪われるのを恐れてでもいるよう」とペトロニラ
うわ言で「アウレリオ」と呼んだと伝える
「あの6年前の4月4日、浅はかにも蜂起の計画を父に話し、彼を死に至らしめたことをずっと悔いてまいりました。私をこのような苦しみのうちに残して去った彼を誰より憎み……そして、愛することをやめられなかった。エゼキエーレ司祭様、アウレリオは…本当にこの世を去ったのでしょうか?」
黙っていることに耐えられず、ペトロニラに真実を伝える司祭様
一度だけ手紙を寄越したアウレリオ。シチリアの地を二度と踏むことはないと。それなら伝えないほうがいいと思った、と司祭様
『本当に彼が、ルナ伯爵夫人をパレルモに誘き出し、死に追いやったのだろうか。そうは思いたくはないが、やはりそうとしか考えられない。一体何故そこまでする必要があった、ベネデット…!』

 

 

○第八話○
『政府の手を逃れ、山荘で隠れるように暮らしていたルナ伯爵夫人は、ベネデットとの密会のためにパレルモへ赴き、そこで何者かに暗殺された。本当に彼があの人をパレルモへ誘き出し、死に追いやったのか。一体何故そこまでする必要があった、ベネデット…!』
ベネデットにアウレリオが生きていた事実を伝えるペトロニラ
「ベネデット、何故私に話してくれなかったの?」「君にだけは知られたくなかった!君はずっと彼を…」「馬鹿言わないで!」「折あるごとに、彼の墓に花を手向けていただろう」「知ってたのね…。過去に愛した人を悼むのが、そんなにおかしいこと?ベネデット、彼とのことは、私にとってもう遠い思い出だわ。私がどれだけのものを貴方と築いてきたと思っているのよ。彼が生きていたからといって、貴方の妻であり、3人の子の母である私が無分別な真似をするとでも?」
何のためにアウレリオは戻ってきたのか。ならず者と手を組んで何を企んでいるのか
どんな罠もふたりで退けてきた、とペトロニラ
【アウレリオ…君の目的は何だ?新政府で地位を築き、かつての恋人を奪った僕を妬んでいるのか?それとも、正義を気取って僕に裁きでも下すつもりか?訳はともかく、今の僕にとって君は敵だ】
ドン・ニニとアウレリオの話を聞いていたマリッキア。誰が仕組んだものかピッポに話す
立ち聞きをこっぴどく叱られた。今は待てと言われたが、さっさとやってしまいたいとマリッキア
今は動かないほうがいいと諭すピッポ
アリスとの会話。「俺が問いただしたいのは、あの人にそんな真似を働いて、平気な顔をしていられる奴の胸中だ」
ベネデットと話をしたいアウレリオ。エゼキエーレ司祭様に仲介を頼もうとする
もう二、三彼らの仕事を手伝ってからパレルモに戻るというアウレリオに、「健闘を祈るわね」とアリス
「私は一足お先にお暇しようかと。シチリアの山賊たちとの暮らし、中々楽しかったわ。大いに満足よ!」「どこへ行く気だ?」「この先に、800年前のアラブ時代の遺跡があるの。せっかくだから、もう少し足を伸ばしてみようかと。地中海の大商人が隠した財宝が眠ってたりして♪」「ひとりじゃ危ない」「適当に護衛でも雇うわ。貴方より、もっと頼りになる相棒を探さなくちゃね、ジュリオ」←奔放なアリスと振り回され気味なアウレリオの組み合わせ好き
サルバトーレにドン・ニニ達の居所を探させるベネデット
「つまらなくなるぜ、おめえさんがいなくなるとよ」「長らく世話になった」「おめえさんになら、マリッキアを嫁にやって俺のあとを任せてもいいかと思ってたんだが」「父さん!?何馬鹿言ってんの?あ、アンタなんか何処へでもいっちまいな!」「ははは!なんでい、満更でもなかったらしいな」「いい娘だ。俺なぞには勿体ない」←ここのやり取りめちゃくちゃ好き
予算削減で聖ロザリオの祭りを中止されてパレルモの連中が荒れてる。そこを突いてパレルモに繰り出せば、町の連中も乗ってきてくれるとドン・ニニ
計画を話しているところで、ピッポの姿が見えないことに気付く
ピッポ宅のテーブルの上に母親の形見のロザリオが置かれており、しかもオルシーニ爆弾が幾つかなくなっている
観劇帰りのベネデットとペトロニラ。馬車が近くになかった為歩いて移動
そこに現れるピッポ。爆弾を投げる
「あたしが余計なことを言ったから…!」と悔やむマリッキア
俺のもたらした情報でピッポが狙ったなら責任の一端は俺にある、とアウレリオ
ベネデットを庇い少しガラスの破片で怪我をしたペトロニラ
警察に取り押さえられる前に所持していた拳銃でピッポは自殺する
「アウレリオの仲間だ。きっと奴が後ろに…」「アウレリオが仕組んだことだと言うの?」「許せない…!僕だけならまだしも、君にまで危害を!」「どうして彼がそこまで……そうだわ。あの男、確かルナ伯爵夫人の仇と…」「……身に覚えがない。勘違いで…恨まれてはたまらない」「じゃあどうするの?」「奴らの居所は探らせた。既に目星はついてる」
ピッポの死に泣き崩れるマリッキア
ベネデットが本気で山賊狩りをする気だとアウレリオ。急いで身を隠すほうがいいとドン・ニニに進言
「マリッキア、あとは任せた」「俺の夢をこんなところで終わらせるわけにはいかねえ」残りの爆弾を使って全員吹き飛ばしてやるとドン・ニニ
「待て、俺が行く」「うちの手下がやらかしたことだ。けじめをつけなきゃなんねえ」「ベネデットの狙いは俺だ。決着は俺がつける」「……よし。ジュリオ、おめえさんと一緒なら派手な花火が打ち上げられそうだぜ」←ここのやり取りめちゃくちゃ好き
マリッキアに全てを託すドン・ニニ
ドン・ニニとアウレリオのたったふたりの猛攻を中々止められないサルバトーレ
「よぉし、あとはまとめて道連れにしてやらぁ。ジュリオ、あばよぉーっ!」「ドン・ニニ…!」大勢を道連れに爆破する
「くそ…これまでか」「待て!まだその男を撃つなっ!」「……ベネデット」「久しぶりだな、アウレリオ。再会を祝して、ゆっくり話をしようじゃないか」

 

 

○第九話○
「ドン・ニニの名にかけて…!」マリッキアは山賊を引き連れてパレルモに攻め入る
「怖かったわよね、爆弾だなんて」ペトロニラの見舞いに訪れるアリス。そこでアウレリオと行動を共にしていたことを伝える
場面変わってふたりで飲みに来ているアウレリオとベネデット。乾杯する
4月4日の後の話はエゼキエーレ司祭に概ねきいた。シチリアを離れて何をしていた?と問いかけるベネデット
南イタリアで、統一イタリア政府への抵抗運動に」「道理で逞しくなったわけだ」
「随分色々とやってくれたな。僕の事業を妨害し、別荘に乗り込み、馬車に爆弾を投げつけ…」「爆弾は俺じゃない」「本当か…」
負傷したペトロニラを心配するアウレリオ。「君たちが無事でよかった。誓って俺じゃない。身を寄せていたところの若い奴が思い余ってやったことだ」
何故アウレリオがこのような行動に出ているのか、最初はわからなかったが今は理解しているらしいベネデット
「覚えてるかベネデット。あの頃、俺たちはよくあの人の家に遊びに行っただろう」「手作りの菓子を、振る舞ってもらったなぁ。カンノーリにカッサータ。僕の母のより、美味しかったよ」「俺は母親に菓子を作ってもらったことがない。母とはこんな感じかと。我々の活動を支援しながら、あの人は俺たちを案じてくれた」「あぁ。命を大事にしろと」
「……そろそろ教えてくれ。アウレリオ、どこまで知ってる?」「郊外の山荘に隠れていたはずのあの人が、君と密かに会うべくパレルモに赴き、そこで刺客の手にかかったところまで」「よく調べたな…」「用心深い人だった。余程信頼する者の招きでなければ動くまい。相手が君なら得心がいく。ベネデット、深い理由があってのことだろう。俺に話してくれ。何故君はルナ伯爵夫人を…」「そう、その目だ。アウレリオ、君の燃えるような目の光。僕はいつも、心の奥底を見透かされているような気がしたよ」「ベネデット…」「君には何も隠せない…正直に言おう」
パレルモ市議会経済顧問の地位と、ジャルディーニ商会に対する政府からの多額の融資。政府はそれらと引き換えにルナ伯爵夫人暗殺の片棒を担ぐよう僕に求めた」「っ……何故応じた?」「どうしても必要だった。地位と富、揺るぎない力が」
それを求めるしか生き残る術がなかったとベネデット
「理解できないという顔をしてるな」「あぁ、信じがたい。俺の知るベネデット・シピオーニは、地位や力と引き換えに世話になった人を売り渡すような人間じゃない。ベネデット…俺は憧れていた。我々の手で社会の歪みを正そうと…このシチリアを、二千年の眠りから目覚めさせるのだと、そう言って俺に道を示してくれた君に…」「アウレリオ、今君の前にいるのは、最早あの頃の僕ではない。そんな青臭い理想を説いていた若者は、もういない」「何が君を変えた?何故そうまでして…。ベネデット、あまりに無様だ。嘗て我々が夢見たものとは程遠い今のシチリアで、虚しい栄光を追う君の姿は…!」「アウレリオ、本当にわからないのか?僕がどうして力を欲するのか。……彼女のためさ」
ペトロニラと、彼女の誇りを守るために力を欲したとベネデット
わかっていながらあの頃の僕は敢えて考えないようにしていた、とベネデット
「生まれによる垣根がなくなれば、ペトロニラとも対等になれる」と言っていたベネデット。ベネデットがイタリア統一運動に没頭したのは、身分の違い故に叶わなかった初恋の恨みを、理想で塗り固めて戦っていただけ
「アウレリオ、君の憧れには値しない」「やめろ…ベネデット。君にそんな風に言ってほしくない…」「あの革命で、新政府の樹立に貢献し、僕は社会的な地位を得た。僕との結婚に応じる以外、ペトロニラには身を守る術がなかった。手に届かないはずの人を得てしまった償いに、僕は心に誓った。彼女の誇りを、二度と傷付けさせないと。その為には、決して脅かされないだけの力がいる。何を犠牲にしてでも」「ベネデット…」「君にはわかるはずだ、アウレリオ。もし、ペトロニラと結ばれたのが僕ではなく、君だったなら…君ならどうした?」
急に表が騒がしくなる
場面変わって、ペトロニラに全て打ち明けたアリス。ルナ伯爵夫人のことも知る
ベネデットはいつも肝心なことは言わない。怪しげな男を雇って何かしていることは気付いていたペトロニラ。「彼がそんな恐ろしいことに手を染めるのも、元はと言えば、全て私のため。彼の罪は、そのまま私の罪だわ」
外が騒がしくなる。暴動が起こっている
暴動を率いるはマリッキア
ペトロニラが心配だと、まず家に帰ろうとするベネデット。撃たれてしまう
ペトロニラの元にマリッキア。「親父とピッポと、ジュリオの仇!」と銃を向ける。「これはあたしの仇撃ちだ!」
用件は訊くとペトロニラ
マリッキアの母と弟たちは父が留守の間に憲兵に焼き殺された
ペトロニラを撃とうとするマリッキアの前に出てくるアリス。「その人に手を出したら、貴方でも容赦しない」
「はっ…あたしを殺すの?」「友達を撃ちたくない…!お願いマリッキア、私に免じて下がって!」「……何さ、結局あんたも貴族様の味方…!」「貴族も山賊も関係ないわ。その人は私の…!」「アリス、幾らあんたの頼みでも…」「マリッキア!」「待って!ありがとうアリス、もういいわ」「ペトロニラ…!」「私の夫がしたことについて、言い訳はしません。罪はこの身で償います。それで貴方の気が済むなら、お撃ちなさい」「だめよ…!」
子供が泣き出す
「……やめた」「マリッキア…?」「あたしの家族を焼いた憲兵共と同じことをしちまうところだった。……アリス、さっき友達って言ってくれたね?」「えぇ…」
サルバトーレがマリッキアを撃つ
「マリッキア!」「奥様、ご無事で?」「サルバトーレ医者を!」「は…?」マリッキアに声をかけるペトロニラ
「いらないよ…同情はまっぴら…!」「マリッキア…」「アリス、あんた、あたしとこの奥様が似てるって?」「えぇ…似てるわ。激しくてしなやかで、私にはない強さが…」「アリス…あんたやっぱり、変な人…」事切れるマリッキア
血塗れのベネデットを背負い、エゼキエーレ司祭の元を訪れるアウレリオ
「申し訳ありません、エゼキエーレ司祭様…。ここ以外に思いつかず…」「よくぞ、儂を頼ってきた。暴徒と言えど聖ロザリアを敬う民衆は教会に手出しはすまい。神の御名において、儂がそなたたちを守ってみせようぞ」

 

 

○第十話○
「あ…アウレリオ…」「ベネデット、あまり喋るな」「懐かしいな…いつかも君と二人、警官に追われてこの教会に逃げ込んだ」「あぁ、そうだったな」懐かしい思い出を話すベネデット
「ベネデット、さっきの質問への答えがまだだった。もし俺が君の立場なら、ペトロニラと結ばれたのが君ではなく俺だったら、俺ならどうしたかと訊いたな。おそらく俺も、君と同じことをしたはずだ。彼女と、彼女の誇りを守るために、きっとどこまでも力を求めただろう。必要とあらば、母のように親身に世話してくれた人を死に追いやることも、或いはあったかも知れない」「そうか…僕の方も同じだ。もし君がペトロニラを得て、権力の座にしがみついているのを見たら…きっと君を許さなかった。君の罪を糾弾するために、どこまでも君を追いかけただろう」「ベネデット…」
6年前の4月4日。エゼキエーレ司祭様に助けられたのがベネデットで、ジャルディーニ家に運び込まれたのがアウレリオだったなら。「この教会に転がり込んだあの時、我々のかけくらべには、勝ち負けはついていなかったな。もしあの日まで戻ってやり直したなら…」「あぁ…もしかしたら…」
苦しむベネデット
「生きろ…アウレリオ…僕の、分まで…」
事切れるベネデット
『聖ロザリアの名の下に繰り広げられたパレルモ市民の暴動は、統一イタリア王国の軍勢によって、程なく鎮圧された。ペレグリーノ山の麓、海を臨むサンタマリアデイロートリ墓地。4月4日の蜂起で散っていった仲間たちが眠り、そして…アウレリオ・カーサデイの墓があるあの場所。パレルモの盟主であるベネデットの埋葬には、沢山の参列者が集まり、黒いベールに身を包んだ喪服姿のペトロニラに、悔やみの言葉をかけていた』
「ジュリオ。そんなところに立ってないで、そばに行っておあげなさいよ」と花を沢山抱えたアリス。共同墓地に葬られたマリッキアへ捧げるもの
目の前にいたのに助けられなかったというアリスを慰めるアウレリオ。そこにペトロニラが来て、アリスは席を外す
「アウレリオ。あなた、アウレリオね?」「……やぁ」「見違えたわ。すっかり逞しくなって。でも、その目は昔のままね」(やぁ、の言い方が含みがあって大変素晴らしい)
ベネデットの最期を看取った礼を言わせてほしいとペトロニラ
「礼なんて…。俺は何もしてやれなかった」
いつかこんな日が来る気がしていたペトロニラ。「来るべき時がきただけなのよ」
ベネデットとアウレリオの子、テオが来る。5歳。父親が亡くなったことをまだ理解できていない
「いいかいテオ、よく聞くんだ。君のお父さんは素晴らしい男だった。このシチリアの未来のために、理想を掲げ、命を燃やして戦っていた。強い意志と優しい心を持ち、自分のことを顧みず、愛する者たちのために尽くすことを知っていた。神話に出てくる英雄のような君のお父さんは、俺の憧れそのものだった。お父さんのことを誇りに思うといい。テオ、君はベネデットの息子、シチリアの男だ。これからは君が、お母さんや弟、妹を守るんだ」「わかった」「よーしテオ、いい子だ」
「ペトロニラ、それでは」「えぇ」「貴方と、3人の子供たちの未来に幸運を」「貴方にも。……さようなら、アウレリオ」
エゼキエーレ司祭様に別れを告げるアウレリオ
「後先考えず戻ってきたものの、既に目的は、曲がりなりにも解けました。弁護士、アウレリオ・カーサデイはとうに死に、このパレルモの街は最早、私が生きる場所ではなさそうです」「向かうあてはあるのか?」「長く南イタリアで抵抗運動に身を投じてきましたが、聞けばそれも遂に平定されたとか。シチリアの人々は、今回の暴動が鎮圧されても、新政府の圧政を正すために、きっとこの先何度も立ち上がるでしょう。彼らと共に戦い続けるべきなのかも知れませんが…」「無理をするな。ベネデットをあのような形で失っては最早そのような気にもなれまい。アウレリオ、そなたはこれまで十分に戦ってきた。もうよいのではないか?」「ふっ…ベネデットの奴は、最期に随分酷いことを言ってくれました。【自分の分まで生きろ】などと。最早何を為すべきかもわからない俺のような人間に」「彼の影に囚われすぎるな。ベネデットも、それは望まぬ。アウレリオ、そなたはそなたの人生を好きに生きるのだ」「私の人生…」「行きたいと望む場所へ行き、見たいと望むものを見るがよい。そなたの胸に棲まうベネデットと共に。その身がどこにあろうとも、そなたがそなたであることに変わりはない。神だけは常に見ておられる」「エゼキエーレ司祭様…感謝します。貴方様は幾度も私に新しい人生をお示しくださる…」「我が息子よ。いついかなる時も、儂はそなたの為に祈っておるよ」めちゃくちゃいい親子の会話だった…
旅に出る前に、ペトロニラに別れを告げるアリス。ロンドンで発刊されたばかりの不思議の国のアリスの本をプレゼントする。「アリス…貴方と同じ名前ね!」子供に読んであげてとアリス
「きっとこれを開くたびに、今アリスがどんな冒険をしているのか、貴方に思いを馳せるわ!」←流石アリスである
カモメの声。船の上
「まさか貴方が、私の旅に着いてくるなんて!人生はわからないものねぇ」「エゼキエーレ司祭様が仰ったんだ。行きたいと望む場所へ行き、見たいと望むものを見て生きろと。急に言われてもどうしていいかわからないが、そういう生き方をしている人間なら、俺は一人知ってる」「まぁ。私は構わないわ。えーっと、アウレリオ、ジュリオ…どっち?」「好きな方で呼んでくれ」「じゃあ、その時の気分で、適当に呼ぶことにするわね。いいことジュリオ?私はイギリス人の旅行者。貴方はその護衛兼下僕よ」「はっ…もうこの際何でもいい。……それでは奥様、この先のご旅程をお伺いしても?」←ここの言い方好きすぎるし、アウレリオとアリスの関係も好きすぎる
「まずは、ジブラルタル海峡から大西洋に出るでしょ?そこから喜望峰経由でアジアを回るの。インドのカルカッタやシャムのバンコク、シンの上海。今度こそ日本の横浜にも行きたいわ!」「なるほど?いつぞやの与太話を実現しに行かれるというわけですね。結構なことだ」「与太話とは何よ!上海までは、前にもほんとに行ったことあるんだから。イギリス政府の方から、幾つか頼まれごともあるし?あちこち寄港して人と会ったりもしないといけないし、予定は盛り沢山よ」「それはそれは」「この船旅の間に、今まで描いてきた絵と合わせて旅行記を書くつもりなの。下僕のジュリオも登場させてあげるわね?それでもし、出版した本が大当たりしたら、貴方へのお手当てもはずんであげる!」「素晴らしいご計画です、奥様?」
鐘の音。「船が出るわ!アウレリオ、パレルモの街と海も暫く見納めよ」
『街の背後、南に聳える山の上から日が差し掛かり、逆光の街は深い陰影を描いていた。光の当たる場所は目が眩むほどに明るく、光の強さの分だけ影は一層深い。それが俺と、俺の親しい人々が生まれ、生き、命を散らした場所だった』
ゲーテが手記に書いていたわ。パレルモの街は北向きだから、太陽の輝きは海の波に映らない。だから、紺碧の海がこんなに暗く重たく迫ってくるんだって。だけど私、ここの海が好きよ!人々の魂も、喜びも苦しみも、深い青の中に何もかも飲み込んで平然としている」「生憎俺は他の海なんて碌に知らない。世界の七つの海とやらを見た後なら、違いがわかるようになるのかな」「あっ…ねぇ!」「あれは…!」
『ペレグリーノ山の麓、ベネデットが眠る、サンタマリアデイロートリ墓地の前に広がる白い砂浜。喪服の黒いベールとドレスを風に大きく靡かせながら、彼女がそこに立っていた。彼女は我々の船に向かって、右手を高く掲げてみせた。まるで、誇り高く、愛情深く、時に気まぐれな、古の神話の女神のように』
ーーイタリア半島の南、地中海のただ中に浮かぶシチリア古代ギリシャの時代から、さまざまな民が行き交ってきた美しい島に、また新たな時代が訪れようとしている

 

END